NPO ブロードバンドスクール協会 7 月 1 日から 31 日まで、SNS を通じて実施したネットアンケートの結果をご報告します。
これからのスマートフォンとインターネットについての利用者アンケート結果報告
これからのスマホ・インターネットに関する70代以上との比較アンケート結果
「スマホは便利で楽しい 、 もっと知りたい 」 シニア への IT 学習支援が未来を拓く
200 名の回答者の 76%は女性 で、 半数以上が60代以上 なのは、 BBS の若宮正子理事が副会長をつとめる 「メロウ倶楽部」 や、三好みどりさんが講師をつとめる仙台、横浜、大阪、福岡などの各地で実施している 「スマホサロン」 を通じて知り合った方々 が多いよう です。
スマホを使ってネットアンケートに回答できるスキルを持った方々の回答ですので、この結果は IT スキルを獲得したシニアたちの声でもあります。 実際にサロンやセミナーを通じてお会いした方々です。
現在の高齢者の平均値ではなく、少し未来の高齢者の声ではないでしょうか?
ネットショッピングやオンライン診療を利用できる高齢者が増え、退職後も在宅で働けるシニアエンジニア が増えれば「デジタル社会」への移行と、 IT 人材の確保の一助になることは間違いありません。
なぜ、高齢者のデジタル化は進まないのでしょうか?
「シニアがデジタルを使いこなせる」ためには、もっと技術が使いやすくなることが 必要ですが、今すぐできることは、利用支援活動です。決して企業の有料サポートを否定するものはありません。
しかし、多くの高齢デジタル初心者は、有料サポートに何を質問していいのかわからない場合が多いのです。「スマホで何をしたいのですか?」と聞かれても、何ができるかわからない人には答えられません。
デジタル化へのはじめの一歩を踏み出すことは、 若い人が想像する以上に 高齢者には 難しいのです。
「娘がLINEを使えるようになれば電話代も無料だというのですが、どこでLINEは売っていますか?」
「孫とスマホゲームを始めたら、翌月50万円をこえるをこえる請求が電話会社から届いて困っています」」
「Eチケットは便利だけれど、入力を間違えました。ネットでキャンセルはできないのかしら?」
「不都合な写真を知り合いが無断でSNSアップして困っています。家族には相談できません。」
「自宅にWi-Fiはありますが、家族が高齢の私にはネットは危険だといって使わせてくれません。」
などなど、高齢者の暮らしが安心・安全にデジタル化するための壁はいろいろあります。
私達は、ひとりひとりの高齢者を良く知ってい て、 IT スキルのある 親切な 人 が 、 それぞれにあった パソコンやスマホの使い方、楽しみ方を教えていただけるような 手法を研究し、高齢者にわかりやすい教材を作成して公開しています。
「Word でお絵描き」「 Excel でアート」「スマホゲーム ひなだん」など、 多彩な教材を公開し、ネットやリアルでさまざまなセミナーを実施しています。
元気でリッチな高齢女性たちは地域の主役
メロウ倶楽部やスマホサロンの参加者の特徴は「高学歴」「高収入」な高齢者が多いことです。
これからの日本の高齢者はそれまでの高齢者と比べて大きく異なるのが教育歴の長さです。日本女性は企業や政治分野の進出が遅れていると批判されていますが、茶道、華道、書道、 絵画、 舞踊、手芸(刺繍、織物)など芸術や伝統的な「和」の文化の指導者や名人の多くが女性です。
23万人が行政と連携して高齢者や障碍者の暮らしを支える 福祉ボランティア ・ 民生委員 の 6 割以上が女性 (出典:厚生労働省 で 、自治会や地域の祭り等の伝統行事 や地域活動の実質的なリーダーや指導者が女性である場合も珍しくありませんし、日本の家庭内での母、祖母の発言力は決して小さくありませんでした 。 裏方の活躍が多かった日本女性ですが、これからはビジネスや政治の分野で活躍する女性指導者が増えるのではないでしょうか。
家事や育児をする男性たちが増え、男性による介護も珍しくない時代です。
デジタル技術が変革する女性の生き方、暮らし方
何より、ITスキルの高い女性たちは新しいビジネススタイルを獲得しています。ウェブデザイナーやYouTuber、SNSで多くのフォロワーを持つインフルエンサーとして女性たちが世界中で活躍しています。
高齢女性の職業は「主婦」ですが、高齢になっても豊かな趣味を持ち、多彩な地域貢献活動に参加していて多忙なため、スマホを使えて楽しい、本当に便利だと実感している女性が多いのです。
知り合いの多い女性たちの「口コミ」パワーの影響力は大きいので、IT スキルを習得した女性たちからスマホの楽しさ、注意するべきことなどの知識が拡がるようにBBSはお手伝いしたいと思います。
もっと安くて使いやすいスマホが欲しい!スマホを使いこなしたいが、教えてもらえる場所がない。
パソコンと違って自分のスマホをもって近所のカフェやケアプラザに集まって学べるスマホサロンは、大人気です。
横浜市の中川ケアプラザとBBS が共催した女性のためのスマホサロンは、定員10名で募集したのですが、40名以上の希望者があり、開催日や回数を増やして実施しました。
今回のアンケートでも、これからのスマホに期待したいことは、通信料が安くなってほしいという声と同様にもっと使いやすくなってほしい、使えるように教えてくれる場所がほしいという声が多く寄せられました。
高齢女性たちむけのオンラインスマホサロンを拡げたい
三好さんが指導する横浜のケアプラザや仙台シルバーセンターのスマホサロンでは、会場に集まることが困難になったことを受けて、講座の受講生にLINE グループに参加することをよびかけました。
ネット上でわからないことなどもLINE 上で質問を受けられるようにしたのですが、ZOOM を使ったオンラインスマホサロンを実施するようになりました。
このオンラインスマホサロンの参加者たちと毎年実施している電脳七夕祭りをZOOM で実施しました。
仙台、横浜、東京、大阪、兵庫、香川、福岡、沖縄、台湾からも地域をこえて仲間が集う楽しい学びの場になりました。今年は「薬膳」と「中国茶」のオンラインセミナーを実施しました。
テレワークには賛否があるが、ネット環境が不備で困ったという声が多い。
アンケートでは、2020 年春から始まった「外出自粛」の影響で広まった「テレワーク」や「オンライン診療」についてもコメントをよせていただきました。テレワークは通勤時間が減ってうれしいという声と、ネットだけでは、難しいという意見もありました。
自宅のネット環境などが不備だったり、相手の IT スキルがネット会議に対応できないなどの課題は、今後、改善されていくものでしょう。
SNS 、YouTubeと同様に人気のネットミーテイングアプリ
オンラインビデオ通話体験
高齢者にうれしいオンライン診療
オンライン診療を利用した7名の6名が60才以上です。70代が3名、80代の1名は全員女性です 。
感染が不安で通院を控えたいけれど、定期的な診療や薬が必要な高齢者にとってはオンライン診療はうれしい制度です。
インターネット消費トラブルを経験した人は14.5% 宅配を装った詐欺メールに注意
ネット利用時間が増えたせいか、自宅からのネットがつながりにくくなったという声は 4 件。詐欺メール宅配の不在配達を装った 詐欺メールトラブルは他でも増えているそうです。
コールセンターの規模縮小が原因で相談電話がつながらないという声もありました。
BBSからの提言
企業の皆様へ ― 在宅勤務への支援とシニアのオンラインスマホサロンに講師を派遣してください
企業や行政の皆様には、テレワークを支援するために 地域や家庭、施設に Wi-Fi 環境を整備していただき、高齢者が集まる場所には 気軽に新しいアプリの使い方なども学べるサークル活動をできるような支援をしていただけるようお願いします。
若い人たちは学校や会社で、スマホのわからないところを気軽に相談できますが、高齢者の周囲にスマホにくわしい人は少なく、そもそも身近に相談できる人がいない高齢者は少なくありません。
具体的には、横浜市の地域ケアプラザで実施されているような NPO スタッフや IT 企業の社員がボランティアで講師をするスマホ教室は、自治体が支援する全国各地にある地区センターや老人福祉センターにスマホ講座を設置すればできます。
スマホサロンを支援する 企業のメリット
IT企業にとって高齢者のためのスマホ教室への参加は社会貢献活動だけではなく、超高齢社会における新しい技術やサービスを開発するヒントを獲得できる貴重な機会でもあります 。
シニアユーザーとの交流ができるコミュニティをごいっしょにつくりましょう。
ぜひ、地域の実情にそった形で 自治体や NPO と連携してスマホサロンを実施しましょう。
企業の方は、技術者や 講師を派遣してください。 ネット上だけもありがたいです。
政府、自治体の皆さまへ スマホサロンの会場と広報を支援してください
高齢者のスマホサロンの開催をぜひNPOやボランティア団体と共催してください。
詐欺被害が多い現在、高齢者は、無名な団体が主催する講座には参加しません。 自治体の関連施設を会場にして、信用できる団体のスマホ講座はぜひ共催で開催できるように応援してください。
ほとんどの市区町村には、老人福祉センター、生涯学習センター、市民活動支援センターなどの施設がありますので、そうした施設の企画の中に「シニアスマホサロン」を設置してください。
災害時に役だつスマホサロンからはじめませんか?
高齢者のスマホサロンで、まず学ぶべきメニューは「災害時に役立つスマホ講座」です。
「在宅ケア・介護に役立つスマホ講座」、「安心してひとり暮らしができるスマホ講座」「懐かしい映画や音楽を楽しむスマホ講座」「ふるさととつながるスマホ講座」なども楽しそうです。ふるさと納税者が増えるかも知れません。
75歳以上の「フレイル予防」としてのスマホサロン
2020年4月から「フレイル健診」が始まりました。要介護者を減らし、社会保障費を抑えることはわが国の重要課題ですが、要介護になりたくないのは、誰よりも高齢者本人です。
15項目のフレイル健診の中に「家族や友人との交流がありますか?」「体調が悪い時に身近に相談できる人がいますか?」という質問がありますが、困った時に身近に相談できる人がいない人は多く、そもそも民生委員が訪問すると「ほっておいてくれ」と拒絶する高齢者、特に高齢男性は少なくありません。
高齢男性に人気の高いパソコン学習サークル
私達は、高齢者が高齢者のパソコン学習を支援するシニアネット活動に20年以上取り組んでいますが、男性の参加者が多いことを高く評価してくれる自治体が多いのです。
高齢者のボランティアサークル活動の参加者は女性が多く、男性が参加しやすい活動が少ないことは各地で切実な課題です。
男性が参加しにくい理由は、多くの活動がすでに女性指導者たちによって運営されているので、男性があとから参加しにくい空気があることや、男性むけの活動が少ないからと思われます。
現役時代に社会的地位の高かった男性ほど、女性が仕切る地域活動で新入りとして処遇されることに自尊心が傷づいてしまうのです。
パソコン学習を支援するシニアネット活動は米国ではIBM,日本ではNTTやNECなどIT企業のOBが活躍するシニアパソコンクラブは拡がり、定年後の男性の居場所として継続されています。
パソコンやスマホのトラブルを相談することは、誰でも経験することなので、「困っていること」をなかなか口に出せない男性も心を開きやすいようです。パソコンやスマホ教室を通じて、助け合える地域の人たちとの交流がフレイル予防として期待できると思います。
パソコンやスマホを利用できるようになれば外出自粛になっても、体調が悪くて外出ができない時でも自宅からメールやSNSで交流できます。
90才のプログラマーの幸せな老後と旅立ち
メロウ倶楽部には、亡くなる直前までネットに書き込みをした方や、重い障害を抱えながら技術ボランティアとして運営を支えているボランティアの方たちがおられます。先日、メロウ倶楽部の世話人として長く貢献されていた90才の男性会員Sさんが亡くなりました。
プログラミングを楽しみ、ポーカーをひとりで楽しめるオンラインゲームを完成させた翌日に安らかに旅立たれました。
前日まで元気で、機嫌よく、美味しく食事をし、朗らかに妻に「おやすみ」といって就寝されたそうです。
85才の若宮正子理事は世界最高齢のプログラマーとして世界的に有名な女性ですが、「Sさんのすばらしい、うらやましい老い方と死に方」とSNSで紹介しています。
NPOブロードバンドスクール協会は、シニアスマホ講座に役立つ教材を提供、講師を養成します。
これからの高齢者は「ITスキルがある」「知的好奇心」にあふれた元気な人たちです。
元気なシニアが長く元気でいられるように、外出が難しくなってもネットを通じて交流できるよう、意欲と知識のある世界中の人たちとの豊かなつながりを育て、ごいっしょに平和で活力ある社会
のために貢献いたしましょう。
BBSでは 2020年9月から、女性のためのスマホサロンで高齢者のサポートしてくださる方を対象にオンライン講座を開始します。
参加を希望される方は、BBSシニアのfacebookページからアクセスしてください。
デジタルライフサポーター(Digital Life Supporter)養成講座
第1回 9月15日 午後1時―2時 講師 三好みどり
第2回 9月29日 午後1時―2時 講師 三好みどり
参加 無料
参加資格 18才以上の女性
高齢者(親族でも良い)へのパソコン指導経験のある方
2020年09月01日 08:51