入院中の少女が、TV 会議システムで友だちといっしょに卒業!
阪大病院院内学級と富山県氷見市の小学校を結んだオンライン卒業式
▲氷見市立宇波小学校の卒業式のようすと、阪大病院にいる山下真緒さん(画面右のスクリーンに映っている)の卒業証書を読み上げる小林悦郎校長

3月は卒業の季節。今年も全国でたくさんの卒業式が行われましたが、そんな中に大阪大学医学部附属病院と富山県氷見市立宇波小学校をテレビ会議システムで結んだ感動的な卒業式がありました。

心臓病の治療を受けながら院内学級で勉学を続けてきた山下真緒さん
氷見市立宇波小学校に通っていた山下真緒さんは、2007年2月、心臓病の治療のため大阪大学医学部附属病院(以下「阪大病院」)に入院しました。その後は、治療を受けながら同病院に設けられた院内学級(大阪府立刀根山支援学校の分教室)で勉学を続けてきました。そして、2008年3月18日、氷見市立宇波小学校で卒業式が行われることになりましたが、真緒さんは同小学校のクラスメートといっしょに卒業したいという希望を持っていました。それを知った院内学級の先生方や同病院のドクターらは、なんとか真緒さんの希望を叶えようと努力し、病院と宇波小学校をテレビ会議システムで結んだ卒業式が実現しました。
3月18日、宇波小学校の講堂で行われた卒業式では、卒業する12人が担任の宮越孝子先生から次々に名前を呼ばれ、舞台に上がって卒業証書を小林悦郎校長から授与されました。12人のうち10番目の卒業生が証書を受け取ると、舞台にセットされたスクリーンに阪大病医院院内学級にいる真緒さんの姿が映りました。そして、宮越先生がよく通る声で「山下真緒」と呼ぶと、スクリーンの真緒さんが車椅子から立ち上がり、大阪府立刀根山支援学校の牧野修司校長から卒業証書を授与される姿が映し出されました。事前に、宇波小学校の卒業証書が大阪の院内学級に送ってあったのです。卒業式に列席した子どもたちや、先生方、保護者たちは、真緒さんの元気な姿を見て一様に安心すると同時に、大きな感動に包まれたようでした。この後、スクリーンの映像は消されましたが、大阪の真緒さんは、宇波小学校で続いている卒業式のもようを最後まで視聴しました。
宇波小学校の卒業式会場に映し出された山下真緒さん(下)と、

大阪に送られているものと同じ映像(下)


阪大病院の院内学級で大阪府立刀根山支援学校の牧野修司校長から卒業証書を授与される真緒さん
小学校最後のホームルームにも真緒さんが参加


▲宇波小学校6年生最後のホームルーム(左)と、阪大病院の真緒さんに語りかける宮越先生(右)
卒業式の後、6年生11人は教室に戻り、小学校最後のホームルームが始まりました。6年生の教室には、テレビ会議システムに接続した大型テレビが置かれ、そこには阪大病院の自室にいる真緒さんが映し出され、宮越先生が、11人の子どもたちと大阪の真緒さんに、お祝いと励ましの言葉を贈りました。卒業の喜びに満ちた教室には、感激に目を潤ませた保護者も集い、その中には真緒さんの父、雅次さんの姿もありました。母の千登勢さんは大阪の真緒さんに付き添っています。 宮越先生と11人の子どもたちは、テレビ会議システムを通して、真緒さんとひとりひとりが言葉を掛け合い、「いっしょに卒業できてよかったね!」と喜びを分かち合いました。真緒さんのお父さんもテレビの傍にやってきて、カメラを通して真緒さんと語り合っていました。 そんなやり取りの中、宮越先生がカメラを通して真緒さんと話をしたとき、真緒さんは大阪のスクリーンに映った先生を見て、思わず「先生、きれい!」。宮越先生も嬉しくなって、「ありがとう、先生にきれいって言ってくれたのは真緒ちゃんだけだよ!」と大きな声で応えました。……こんなふうに、ホームルームの歓談は続いていきました。 宇波小学校の6年生の皆さん、卒業おめでとう! 真緒さんが健康を取り戻して、友だちといっしょに楽しい中学校生活を送れる日が一日も早く来ますように! こう祈りながら、私たちは宇波小学校をあとにしました。

▲阪大病院の真緒さんもいっしょに6年生全員で記念撮影。
阪大病院の真緒さんに話しかける父親の山下雅次さん
